【真実は?】農薬の危険性は嘘⁉なぜ「無農薬の方が危険」と言われるのか

- 農薬の危険性
- 「無農薬の方が危険」と言われる理由
- 無農薬・オーガニックを選ぶべき理由
健康のことを考えて、食事を見直す。
となれば、まず農薬を体に入れないように、無農薬や有機の農産物を選ぶ人が多いかと思います。
ですが、農薬を否定する人がいれば、肯定する人がいるのも、これまた事実です。
「農薬の危険性は嘘だ!」
「無農薬の方が危険だ!」
テレビ、書籍、インターネット、、、
さまざまな情報が飛び交っていますね。
この記事では、農薬の危険性について、また「無農薬の方が危険だ」と言われる理由について詳しく解説します。
食と健康について考えるなら、農薬の問題は避けて通れません。
今一度この問題に向き合いたいと思います。
筆者プロフィール

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ジャンクフード中毒から自然食品店長に。
20代で体調を大きく崩し、食養を学んで病弱体質を改善。自然食の仕事10年以上の経験と体験をもとに「安全な食品の選び方」と「体にいい自然食」について発信中!
農薬の危険性

農薬についてさまざまな情報が流れていますが、まず大前提として「100%安全なものはない」ということを理解しておく必要があります。
つまり、どんなに安全性が認められていたとしても、その量や使い方を間違えれば農薬は危険なものになります。
まずは、農薬にはどんなリスクがあるかを知っておきましょう。
- 発ガン性
- 化学物質過敏症
- 不妊症
農薬のリスク①発ガン性

2015年、世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、農薬として使用される除草剤グリホサートに発ガン性の危険性があることを指摘しました。
グリホサートは、バイエル社が2018年に買収したモンサント社が開発した除草剤で、「ラウンドアップ」などの商品名で日本を含む多くの国で販売されています。
このIARCの発表を受けていくつかの国が規制強化や使用禁止に乗り出しました。
アメリカではグリホサートが原因で体調不良を訴える人が訴訟を起こし話題になりました。
日本でも、アメリカからの輸入小麦や、それを原料とした食パンなどからグリホサートが検出され、一時期消費者の間で懸念が拡がりました。
しかし、IARCの発ガン性評価は発ガン性の強さを分類しているものではなく、発ガン性を指摘する論文の数によって分類されたものです。
グリホサートはグループ2Aに分類され、普段から口にしやすい赤身肉や加工肉と同じ「おそらく発ガン性がある」とされているグループです。

この「グループ2A」の評価は、動物実験における証拠では十分だが人間における証拠は限定的であるとされています。
つまり、必ずしも「発ガンするもの」としているわけではないということ。
とはいえ、科学的にすべてを判断するのもまた間違いで、火のない所に煙は立たないわけです。
農薬を直接口にしたら死亡する事故があるように、そのものが絶対に安全とはやはり言い切れません。
また、ネオニコチノイド系の殺虫剤にも発がん性があることが指摘されています。
ネオニコチノイドは現在世界で1番使用されている殺虫剤です。
その危険性についてもさまざまな研究がなされ、発ガン性だけでなく、神経発達障害との関連なども報告されています。
また過去に、この成分によるミツバチの大量死が社会問題として取り上げられたこともありました。
ネオニコチノイドについても発ガン性の有無は賛否両論で、その議論は今も続いています。
フランスで行われた約7万人の成人を5年間調査した研究では、「オーガニック食品をよく食べる人」と「まったく食べない人」では、オーガニック食品をよく食べる人の方がガンの罹患率が25%低いことが分かりました。
≫参考元:「Association of Frequency of Organic Food Consumption With Cancer Risk 」(2018/JAMA Internal Medicine)
農薬のリスクとして1番に叫ばれる発ガン性ですが、それもやはり残留農薬があってのこと。
農薬を使い続ける以上、発ガン性に対する論争は今後も収まることがないでしょう。
農薬のリスク②化学物質過敏症

もともとの体質にもよりますが、農薬が引き金となり化学物質過敏症を発症する場合があります。
実際に、頭痛・めまい・吐き気・手足のしびれ・視力低下・食欲不振などの神経症状が出て、苦しんでいる人が多くいます。
「農薬だけが原因ではない」と指摘する意見もありますが、その一因になっているのは事実でしょう。
また、食品添加物や水道水に含まれる残留塩素など、さまざまな化学物質との複合的な体内汚染によって起きるとも考えられています。
農薬のリスク③不妊症

残留農薬による体への影響は、女性における不妊症とも関連があることが指摘されています。
アメリカのハーバード公衆衛生大学院による研究で、「残留農薬のある野菜や果物を食べていた女性」は、「無農薬やオーガニック野菜・果物を食べていた女性」に比べて、妊娠成功率が低かったことが分かりました。
≫参考元:「Association Between Pesticide Residue Intake From Consumption of Fruits and Vegetables and Pregnancy Outcomes Among Women Undergoing Infertility Treatment With Assisted Reproductive Technology」(2018/JAMA Internal Medicine)
また、「農薬の残留濃度が高い野菜や果物を多く摂取している男性」は「残留農薬の低い野菜・果物を摂取している男性」に比べて、精子の数が49%少なくなっていることを報告した論文もあります。
≫参考元:「Fruit and vegetable intake and their pesticide residues in relation to semen quality among men from a fertility clinic」(2015/National Library of Medicine)
農薬がすべて悪いということではありませんが、これらのリスクがあることは消費者も知っておく必要があります。
「無農薬の方が危険」と言われる理由

農薬の危険性を訴える人がいるのに対して、「無農薬野菜の方が危険」と意見する人もいます。
そう主張するのは、主に以下の理由からです。
- 残留農薬は人への毒性が極めて低い
- 農薬には使用制限がある
- 無農薬栽培は天然農薬を増やす
理由①残留農薬は人への毒性が極めて低い

私たち消費者が注意している農薬とは、いわゆる「残留農薬」のことです。
残留農薬とは、農作物を育てる際に使用した農薬が野菜や果物などに残っている農薬成分のことを指します。
実は、現在使われている農薬は、昔に比べて少量で効果的になったと言われています。
それは、「非常に強力なので、少ない量でよくなった」のではなく、「標的に対してピンポイントで効くようになった」という意味です。
昔の農薬と今の農薬とを比べると、まず、「選択性」がずいぶん変わりました。選択性とは、防除したい生物のみに作用して、農薬が効かないでほしい人間や畜産動物などの、非標的生物には影響しないよう、その作用が標的を選択できることです。そうすると、人間にはまったく作用せず、ピンポイントで標的生物に作用する農薬となるわけです。
出典:味の素株式会社「農薬の役割って?安全なの?」
効率的に働く農薬であれば、少ない量でも効果があります。たとえば除草剤でいうと、1960年代であれば1ha当たりkg単位で撒くのが一般的だったのですが、今ではわずか数g~数十gで充分に効果を発揮するなど、高活性な農薬になっています(グラフ「高活性(低負荷型)農薬の開発」参照)。少ない量で済むので環境への負荷が減りますし、人間にもやさしい農薬だといえます。誤解していただきたくないのは、少ない量で効くこととは、非常に強力になり危険になったということではなく、人間以外の標的生物のみに選択的に効き、むしろ安全性が向上したということです。
そして、残留農薬の毒性が低いと言えるのは「一日摂取許容量」が設定されていることも理由に挙げられます。
「一日摂取許容量」とは、農薬を毎日、一生涯摂取しても健康に問題のない量のことをいいます。
この数値を設定するには、まず、その農薬の毒性試験を実施します。
そして、健康に対して何の影響も出なくなるまで減らした量を「無毒性量」として設定し、この無毒性量のさらに100分の1を「一日摂取許容量」としています。
残留農薬の基準値は、この「一日摂取許容量」から決められています。
残留基準値はどうやって決められているのでしょうか。
出典元:農林水産省「残留農薬は危ないの?」
まず、予定している使い方で農作物に農薬を使ったときに、どれだけの量の農薬が収穫時に残留するか試験で確かめます。その結果に基づいて、その農作物を食べることで摂取する一人一日あたりの農薬の量を推定します。次に、それぞれの農作物について推定を行い、人がすべての食品から一日に摂取する農薬の量を計算します。求めた農薬の量が「一日許容摂取量」の80%以下であれば、農作物に残留すると推定した農薬の濃度が、残留基準値として設定されます。
「一日許容摂取量」とは、毎日一生とりつづけても健康への影響がないと考えられる量のことです。
1日あたりの農薬摂取量を「一日許容摂取量」の「80%以下」にするのは、農薬の成分を大気や飲料水からもとる可能性があるからです。
現在使用されている農薬は、すべてこの「一日許容摂取量」が定められています。
それが安全だと言われる理由の1つです。
理由②農薬には使用制限がある

農薬を使用するにあたっては、「農薬取締法」という法律があります。
これにより、
- 種類
- 使用量
- 取り扱い方法
- 散布回数
などが厳密に決められています。
農薬は、少なからず人体に影響があることが分かっているからこそ厳しく管理されています。
理由③無農薬栽培は天然農薬を増やす

無農薬やオーガニック栽培を否定する意見の1つに、「天然農薬」の危険性を指摘するものがあります。
天然農薬とは、植物由来の「生体防御成分」のことです。
植物は生き物です。
私たち人間と同じように、外敵から身を守るために「生体防御成分」と呼ばれる物質を出します。
簡単に言いますと、病原菌や害虫に対して抵抗するための物質です。
これは「天然毒」とも呼ばれ、分かりやすいのがじゃがいもの新芽や緑色皮に含まれる「ソラニン」です。
身近な野菜でいうと、トマトには心拍異常を引き起こす「トマチン」があり、山菜のワラビには発がん性のある「プタキロシド」があります。
唐辛子の辛味成分「カプサイシン」なども生体防御成分ですね。
農薬を使わずに育てることは、これらの生体防御成分を非常に多く引き出すことに繋がり、それがかえって悪影響になると考えられています。
【筆者の主張】無農薬・オーガニックを選ぶべき理由

農薬の安全性が以前より高まったのは事実でしょう。
しかし、体のことを考えれば、また環境全体を考えれば、やはり無農薬やオーガニックの野菜を選ぶ必要があると思います。
- 農薬は毒物である
- 天然農薬より化学農薬の方が危険
- 農薬は環境を汚染する
理由①農薬は毒物である

農薬にはさまざまな種類がありますが、そのほとんどが化学的に合成されて作られたものです。
例えばそれを私たちが直接飲んだら、どうなるでしょうか?
、、、最悪の場合、死に至ります。
もちろん、これは農作物に使われるものなので「直接飲んだら、、、」ということを考える必要がないことなのかもしれません。
しかし、お伝えしたいのは「間違って口に入れてしまったら命を落とす可能性がある」ものを、私たちが食べるものに使っているということです。
危険か、危険でないか、という話であるなら、農薬は間違いなく危険なものなのです。
前述した通り、農薬の使用は「農薬取締法」で決められていますが、すべてを検査することはできません。
生産者が農薬の量・使い方を間違えてしまい、それをたまたま口にしてしまうこともあります。
実際に、生産者の中には農薬が原因で体調を崩す人もいます。
そう考えますと、農薬は決して安全なものではありません。
理由②天然農薬より化学農薬の方が危険

「無農薬栽培は天然農薬を増やす」という指摘がありますが、そもそも植物が持つ天然農薬成分は、その含有量はほんのわずかで、そのすべてが人体に有害というわけではありません。
それに対して、残留農薬の基準は安全だと言われていますが、実際にその基準値内であってもアレルギーや化学物質過敏症を引き起こしている人がいます。
であるならば、「じゃがいもの芽は食べない方がいい」などの知識を持っていれば天然農薬の危険から身を防ぐことはできます。
それは、化学的な農薬よりもはるかに安全であると言えます。
理由③農薬は環境を汚染する

農薬を使用することは、私たち人間の健康に影響があるだけでなく、環境を汚染するリスクもあります。
以前、水田で使われた除草剤が川から流れて、シジミから農薬が検出されたことがありました。
そのシジミは危険性を指摘され、出荷が停止されました。
河川に住む生き物が農薬の影響を受けると、河川は汚れます。
すると、そこから環境汚染が広がっていきます。
農薬をその場所・その作物だけに使用していたとしても、周辺環境に影響を与えてしまうことがあるのです。
また、農薬を使い続けることで病原菌や害虫が農薬に対して耐性を獲得してしまうことがあります。
そうなれば、被害が大きくなる可能性もあります。
過度な農薬の使用は、生態系を崩してしまい、その影響は広く自然界に拡散してゆきます。
人間が使い始めた農薬によって、環境が汚染され、生態系をも狂わせ、今、その問題が私たちの身に降りかかってきている
こう警鐘を鳴らす学者は多くいます。
レイチェルカーソンの『沈黙の春』や有吉佐和子の『複合汚染』は、そうした農薬の問題をダイレクトに訴えた本です。
農薬のリスクは、私たち人間のことだけでなく環境についても考える必要があります。
私たちの健康、生産者の健康、そして環境のことを考える。
個人的意見ではありますが、農薬の使用は減らしてゆくべきです。
そのための行動とは、消費者である私たちが無農薬・オーガニックのものを選んでゆくことです。
まとめ

農薬の危険性は嘘なのか?本当なのか?
一人ひとりが向き合って答えを出す必要があると思います。
- 農薬には、発ガン性、化学物質過敏症、不妊症などのリスクがある
- 昔に比べて、使用される農薬は安全性が高まった
- しかし、人への影響、環境への影響を考えれば、無農薬・オーガニックを選ぶべき
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
皆さんも、今一度この問題について考えてみてください。



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