- 乳牛の飼育の現状
- 牛の苦しみを知って、私たちにできること
牛乳は世界中で飲まれている飲み物です。
日本においても、実に3人に1人が毎日飲んでいるといわれています。
「牛乳を飲んだら背が伸びる」
「牛乳を飲んだら骨が丈夫になる」
牛乳は、子供から大人まで多くの人に支持される健康飲料ですよね。
そんな牛乳について、1度、考えてもらいたいことがあります。
それは、牛乳を作ってくれている乳牛のことです。
毎日、多くの人が飲んでいます。
それはつまり、大量に生産されているという事実です。
その裏で、もし乳牛が過酷な飼育で苦しんでいるとしたら?
もちろん、すべての乳牛がそうとは言いません。
そういう部分があるんだということを知っておいていただきたく、この記事を書きます。
より詳しく知りたい方はこちらの2記事をおすすめします⇩
あるとむ
自然食・食養生アドバイザー
食を見直してジャンクフード依存・虚弱体質から脱却。自然食品店の店長として14年の経験、食養生・薬膳などを学び得た知識を活かし、ブログやSNSで広く発信中。
2023年食養生講座をスタート、2024年初著書『食の選び方大全』(サンクチュアリ出版)を出版。オンラインで食事改善の相談・サポートもしています。
乳牛の過酷な一生
日本には約134万頭の乳牛が飼われています。
そうして、年間約730万トンもの牛乳が搾られています。
市販されている牛乳のほとんどは、牛に過酷な飼育を強いて作られています。
広い牧場でゆっくりと過ごしながら、草を食べて育つ、そんなのどかな風景。
しかし、私たちがイメージしているような牛の飼育は、ほとんどありません。
2014年、農林水産省の調査により、70%以上の農家が、乳牛を繋いだまま飼育していることが分かりました。
狭くて、不衛生で、そんな場所で、多くの乳牛は「ただ搾られるだけ」の一生を過ごしています。
牛たちも私たちと同じ命です。
牛が思っていることを言葉では聞けませんが、とてつもないストレスを抱えているはずです。
苦しみながら、時には病気になりながら、自分の子供のためでなく、私たち人間が飲むために、ただひたすらに牛乳を搾られている、とも言えるんですね。
①子牛は生まれてすぐに母牛から引き離される
現在飼育されている日本の乳牛(牛乳を搾る牛)のほとんどは、特に乳の出る量が多くなるように品種改良された牛「ホルスタイン種」です。
家畜として飼われている牛は、牛乳を搾る為の乳牛と、食肉となる肉牛に分けられます。現在、日本には134万頭の乳牛が飼われ、そのうち99%が白黒のまだら模様のホルスタイン種です。
オスの子牛は、生後1週間で競りに落とされ、「肉牛」として飼育されます。
メスの子牛は、「乳牛」として飼育されます。
乳牛は、生まれてすぐに母牛から引き離されて飼育されます。
母牛の母乳(牛乳)を直接飲むことは出来ず、人工のミルクを飲まされるのですが、本物の母乳ではないので消化不良を起こす子牛もいます。
また、母牛との触れ合いがないためか、精神的なストレスを生んでしまうことも指摘されています。
人間もそうであるように、子供にとって母乳は免疫を受け取る重要な飲み物です。
それを飲めずに育てられる乳牛は、この時点で健康とは言えませんね。
②牛のツノは切り落とされて焼かれる
牛は決して強い生き物ではありません。
自分の身を守る為に、牛にはツノがあるのです。
しかし、「飼育している間、人間にとって危険になるから」という理由で、ワイヤーのこぎりで切り落とされ、さらに焼きごてを当てられます。
ツノを切り落とすことは、牛にとって非常に痛く、つらいことです。
ツノには血管も神経も通っており、麻酔をせずに切り落とされた牛は、大量に出血します。
中には、失神してしまう牛もいるそうです。
そして、その場で死んでしまう牛もいるとのこと・・・
③牛乳を出す為に人工授精させられる
私たち人間を含め、哺乳動物は出産しなければ乳を出すことはできません。
乳牛は1才を過ぎた頃、人工授精で妊娠させられます。
そして、前述したように、子牛が生まれるとすぐに引き離されて、子供と触れ合うことなく、搾乳生活が始まります。
自分の子供(子牛)の為でなく、人間の為に毎日牛乳が搾られるのです。
しかも、現在は機械で搾られるところもあり、その場合は人間ともほとんど触れ合う時間はありません。
④おいしい牛乳を作る為に胃の手術を受ける
牛乳は、「脂肪分が多いと美味しい」とされています。
その為、脂肪分を多くする為に、また量を多く搾る為に、草ではなく、大豆などの穀物やトウモロコシがエサとして与えられます。
牛はそもそも草食動物で、大量の繊維を消化する為に胃が4つあります。
本来食べることのない穀物が多く胃袋に入ると消化不良を起こしてしまいます。
それだけでなく、4つ内の1つが変形してしまい、毎年一部の牛が手術を受けなければならない事態となっています。
⑤機械のような扱いを受け、乳牛は生涯を終える
乳牛は鎖に繋がれて、狭いスペースで生活しています。
牛舎にもよりますが、衛生環境のよくないところが多く、汚いところで生活していると、しっぽも汚れてしまいます。
汚れたしっぽは搾乳の邪魔になると言われて、切断されてしまいます。
また、近年、日本では夏の猛暑が問題になっています。
本来、牛は涼しいところで生活する動物です。
冷房が整った牛舎などはほとんどなく、鎖で繋がられた牛は暑さで抵抗力が弱まり、立っていることもできない牛もいます。
病気にならない為に、体調を崩した牛には抗生物質などの医薬品が投与され、今度はその薬害も出てきます。
乳牛は、人間が飲む牛乳をただ製造するだけの、まるで機械のような扱いを受け続けます。
そして、お乳の出が悪くなると「廃牛」といって殺され、食肉にされます。
牛の寿命は約20年と言われていますが、乳牛は5~6年で、その生涯を終えます。
もちろん、すべての乳牛がこのように飼育されているわけではありませんが、現状、そのほとんどが当てはまります。
日本における乳牛の農家一戸あたりの平均飼育数は72頭で、ヨーロッパの33頭と比較すると倍以上高いです。
のんびりと、ゆったりと、牛のことを考えて飼育できている農家は非常にまれということになります。
今の日本の乳牛の飼育環境は、牛にとって本当に苦しい、過酷な環境なのです。
牛のことを考えて、今、私たちにできること
乳牛の過酷な飼育状況を知り、牛たちの苦しみを減らすために、今、私たちにできることは「選ぶ」ことです。
- 牛乳を飲まない
- 牛乳を飲む量を減らす
- 牛のことを考えて飼育している農家の牛乳を選ぶ
牛乳は、本来、日本人の体には合っていないとも言われています。
それは、日本人の多くは牛乳をうまく消化することができないからです。
どんなに優れた栄養を含んでいたとしても、うまく吸収できなければ、意味がありませんよね。
ですので、毎日、健康のために沢山飲むというのはオススメしません。
嗜好品程度に少量を飲むくらいがちょうどいいのです。
牛乳のデメリットについては、こちらの2冊が勉強になります↓
日本にも、牛をただの「牛乳製造機」として扱うのではなく、同じ命として、きちんと牛のことを考えて、牛に負担がないように世話をしている農家さんがいます。
割合からすれば、非常に少ないですが、牛の健康を考えてくれている農家さんは確かにいるのです。
そこで搾られる牛乳は、決して安くはありません。
ですが、そういう牛乳を選ぶことは、そういう農家を応援することになります。
そして、それは過酷な飼育を強いられている牛たちの苦しみを減らすことに繋がるのです。
最後に
乳牛の苦しみ、過酷な飼育は、私たち人間が作り出しているといえます。
単に生産者が悪いというのではなく、ただ安ければいい、という私たち消費者の行動が、生産者をそういう方向に動かしてしまっていることもあるんです。
人間が飲む牛乳のために、牛が苦しむ。
もちろん、これは牛だけでなく、他の食品にも言えることでしょう。
ですから、何が正解かはないのです。
ただ、「知る」ことはとても大事に思います。
その上で、判断する。
消費者が変われば、生産者は変わります。
そして、社会も少しずつ変わってゆきます。
すべてを解決することは出来ませんが、今よりもより良い環境に変えてゆくことはできるはずです。
これを機に、皆さんも是非1度考えてみてください。