健康食といえば「玄米」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
健康のため、美容のため、ダイエットのため、また病気の改善のために、とさまざまな理由から玄米を食べ始める人がいます。
中には、味が好みだという人もいるかもしれませんね。
玄米には豊富な栄養が含まれていて、多くの健康効果が期待されています。
また、日本の「食養」では中心的な食べ物です。
私も食養を学んでからは、玄米をよく食べるようになりました。(毎日ではないです)
この記事では、これから玄米を食べ始めようか考えている人のために、白米との栄養成分の違いを詳しく解説します。
あるとむ
自然食品店の店長。
食養アドバイザー。
食を見直して冷え・虚弱体質・ジャンクフード依存から脱却。
食養生、薬膳、東洋医学などを学び得た知識を活かし、食事改善の相談・サポートをしています。
2023年オンライン食養生講座スタート。
2024年初著書『食の選び方大全』出版(サンクチュアリ出版)。
玄米と白米の違い
はじめに。
玄米と白米の違いは、精米しているかどうか。
つまり、玄米を精米したのが白米です。
玄米・・・稲のもみ殻(外皮)だけを取った状態
白米・・・糠と胚芽が取り除かれた状態
上のイラストを見て分かるように、玄米と白米の違いは「糠と胚芽があるかないか」です。
糠と胚芽が取り除かれ、胚乳だけになったものが白米です。
この「糠と胚芽があるかないか」で、栄養成分に大きな違いをつくります。
玄米と白米の栄養成分
以下は、100gあたりの玄米と白米の栄養成分です。
玄米 | 白米 | |
---|---|---|
カロリー | 350kcal | 356kcal |
タンパク質 | 6.8g | 6.1g |
脂質 | 2.7g | 0.9g |
糖質(炭水化物) | 73.8g | 77.1g |
カリウム | 230㎎ | 88㎎ |
カルシウム | 9㎎ | 5㎎ |
マグネシウム | 110㎎ | 23㎎ |
鉄 | 2.1㎎ | 0.8㎎ |
リン | 290㎎ | 94㎎ |
ビタミンE | 0.3㎎ | 0.2㎎ |
ビタミンB1 | 0.41㎎ | 0.08㎎ |
ビタミンB2 | 0.04㎎ | 0.02㎎ |
ビタミンB6 | 0.45㎎ | 0.12㎎ |
葉酸 | 27㎍ | 12㎍ |
食物繊維 | 3.0g | 0.5g |
カロリーは変わらない
上の表を見ても分かるように、実は玄米と白米のカロリーにはほとんど差がありません。
「だから、玄米と白米はどっちを食べても、あまり変わらないんですよ」
というように話をする栄養士の方がいますが・・・
これは間違いです。
食べ物は、カロリーだけで判断してはいけません。
そもそも「カロリー」とは、熱量(エネルギー)を表す単位です。
この数字は、食品に含まれるタンパク質、脂質、炭水化物の量から示されます。
確かに、エネルギーは人間が体を動かすために必要なものです。
摂取しなければ、生命活動を維持することができません。
しかし、同じカロリーでも中身が違います。
例えば、お米1杯と同じカロリーのお菓子もあります。
では、ごはんのかわりにそのお菓子だけを食べていればいいか、というとそうではありませんよね。
少し脱線してしまいましたが、カロリーは重要な指数であることには違いありませんが、カロリーだけでは食品の良し悪しを見極めることは出来ません。
玄米と白米の違いは、それ以外の栄養成分に表れています。
では、具体的に見てみましょう。
玄米は総合的な栄養食品
玄米と白米の栄養成分を比較すると、カロリー以外の栄養成分には大きな差があるのが分かります。
これは、「糠と胚芽」の部分に多くの栄養成分が含まれていることを意味します。
玄米は他の食品と比較しても、栄養が優れた食品と言えます。
特に、現代人が不足しているといわれる食物繊維が豊富。
また、微量ミネラルの中でも重要とされるマグネシウムも多く含まれています。
このカロリー以外の栄養成分こそ、白米との違いであり、玄米が持つ様々な健康効果を生む要因といえます。
玄米の健康効果については、こちらの記事で詳しく解説しています↓
玄米は、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがバランスよく含まれていることから、総合的な栄養食品と言われています。
玄米を主食にすすめる3つの理由
玄米と白米を比較しますと、栄養面では玄米の方が優れていることが分かります。
ただ、食養の視点では、単に栄養面で優れているからおすすめするのではありません。
以下のような理由から玄米は主食におすすめできる食品といえます↓
- 玄米には生命が宿っている
- 玄米なら噛む回数が増える
- 玄米は「一汁一菜」に適している
①玄米には生命が宿っている
玄米は蒔けば芽が出ますが、白米は腐ります。
そう、玄米には生命が宿っているんです。
「生命なき食物は生命の糧とならず」
こう説いたのは、東大名誉教授の二木謙三博士。
二木博士は、「玄米博士」と言われるほど玄米食者としてよく知られています。
博士は、医者の家に育ったにも関わらず、幼い頃から病弱で、胃腸病、ぜんそく、ノイローゼ、腎臓病、皮膚病と病苦の連続でした。
成人後、「脚気に悩まされていた軍隊が、精白米に精白しない麦を入れて、病人が減った」という話を聞いたのがきっかけで、玄米に興味を持ったといいます。
その後、自らの食事改善で、医薬品で治らなかった病気が治り、昭和42年92歳で亡くなるまでの約70年間、玄米食で健康を維持しました。
二木博士は、白米を「生命なき食物」、玄米を「生命ある食物」として表現し、晩年、玄米の普及活動に貢献したのです。
また、食養には「一物全体食」という考えがあります。
これは、「命を丸ごといただく」という意味で、食養では主食に玄米を選びます。
②玄米なら噛む回数が増える
玄米は白米と比べると固く、また消化に時間がかかる食べものです。
だからこそ、よく噛まなければなりません。
実は、これは現代人にとって、ものすごく有益なことなんです。
よくアメリカのメジャーリーガーがガムを噛みながら試合をしていますが、あれは「噛むことによって集中力が増す」からです。
噛むことによって得られるメリットは、以下のように多くあります。
「噛む」ことで得られる効果
- 唾液の分泌が高まる、デトックス効果
- 消化吸収を助ける
- 食欲抑制、ダイエット効果
- 認知症予防
- リラックス効果
- 顔の筋肉が鍛えられる、しわ・たるみの予防
- 集中力がアップする
- 虫歯予防 など
この「噛む」ということについては、現代に生きる私たちにとっても、無視できないところです。
なぜなら、現代人は昔と比べて明らかに噛む回数が少ないからです。
白米やパンを主食としているよりも、玄米を主食にすることで、自然と噛む回数が増え、脳や体が健康的になります。
③玄米は「一汁一菜」に適している
玄米を主食にすると、少ない量でバランスの取れた食事ができます。
そう、「一汁一菜」です。
以前、厚生労働省が提唱していた「1日30品目を摂る」という健康の為の食事目標がありました。
1日30品目という数字を聞くと、非常に多く感じますよね。
正直、これを実践するのは簡単ではありません。
どんな食材を使えばいいのか、悩む人も出てくるでしょう。
実は、この取組み、実際に摂り続けるとカロリーオーバーになることが分かり、現在は「主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」という表現に変わりました。
しかし、なぜ1日30品目も摂る必要があったのでしょうか?
これは、そもそも白米を主食として考えられたものだからです。
前述した通り、白米はカロリーはあるものの、その他のビタミン、ミネラルなどの栄養素が削られてしまい、それを補うために他に30品目必要だと考えられていたのです。
ところが、玄米を主食とした場合、玄米自体にすでに豊富な栄養がバランスよく含まれていますから、極端な話、玄米と具沢山のお味噌汁、それだけでも十分な栄養が摂れます。
玄米ほど「一汁一菜」に適した主食はありません。
ちなみに「一汁一菜」は、健康的にも、経済的にもおすすめです。
一汁一菜のメリット
- 食べ過ぎにならない
- 献立に迷わない
- 短時間で調理できる
- 食材が少なくてすむ など
管理栄養士の圓尾和紀さんが書いたこの本には、「一汁一菜」のメリットが詳しく書かれていますね↓
「若杉ばあちゃん」こと若杉友子さんの本には、具体的なレシピが多く載っていて参考になります↓
玄米にデメリットはないのか?
ここまで玄米の良さばかりを伝えてきましたが、反対に悪い部分はないのか。
そう考える人もあるかと思います。
それについては、こちらの記事を参考にしてください↓
玄米を買うなら、有機栽培、無農薬栽培のものを選びましょう!
まとめ
玄米と白米の違いは、カロリー以外の栄養の違いです。
そして、玄米を主食にすることで得られるメリットは多くあります。
ただし、すべての方に玄米がおすすめというわけではありません。
玄米は消化がよくありませんので、よく噛む必要があります。(これは良い理由でもあるのですが、、、)
胃腸が弱い方は、白米と玄米を混ぜて炊いたり、白米に麦や雑穀を入れて炊くのもおすすめです。
また、胚芽米(白米まで精白せずに、胚芽と少しのぬかが残っている状態)は、白米と食感、味にほとんど差がないので、これを食べるのも良いでしょう。
玄米の美味しい炊き方については、こちらの記事を参考にしてください↓