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化学肥料のメリットとデメリット【健康と環境、そして未来について考える】

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化学肥料って体に悪いの?

化学肥料を使うと、なにか問題があるの、、、?

今回はこんな疑問に答えます。

この記事で分かること
  • 化学肥料のメリットとデメリット
  • 「化学肥料はよくない」と言われる理由

あるとむ

自然食×食養生アドバイザー
食を見直してジャンクフード依存・虚弱体質から脱却。自然食品店の店長として14年の経験、食養生・薬膳などを学び得た知識を活かし、ブログやSNSで広く発信中。
2023年食養生講座をスタート、2024年初著書『食の選び方大全』(サンクチュアリ出版)を出版。オンラインで食事改善の相談・サポートもしています。

「食の安全」について考える人が増えています。

健康を考えて、無農薬の野菜や無添加の食品を求める人が増えているのは良いことですね。

ですが、農薬も化学肥料もちゃんと理由があって使われていることを知っておく必要があります。

そうでないと、一方的に批判してしまって、その恩恵を受けていることを見失ってしまいます。

「食の安全」に関しては、どちらが良いとか悪いとか単純に否定するのではなく、まずはその内容を知り、一人ひとりがちゃんと答えを出してゆく必要があります。

あるとむ

まずは知ることから!

この記事では、化学肥料がどういうものなのかをはじめて知る人にも分かりやすく解説します。

※より専門的なことが知りたい人は農林水産省のホームページを読んでみてください。

タップできる目次

化学肥料とは

化学肥料は効率よく野菜を育てるために必要とされ、現代農業ではとても重要な役割を果たしています。

化学肥料を使うことで、天候に左右されることなく、一定量を1度に収穫できます。

農家さんの仕事だけでなく、私たち消費者の食生活も支えてくれているといえます。

ただし、過剰に化学肥料を撒くことで、私たちの健康や環境に悪い影響を与えてしまう可能性があります。

まずは、その化学肥料がどんなものなのかを解説します。

肥料とは

化学肥料について知るために、まず肥料とは何かを理解しておきましょう。

肥料とは「植物を育てるために人間が施す栄養」のことをいいます。

肥料(ひりょう、肥糧)とは、植物を生育させるための栄養分として人間が施すものである。土壌から栄養を吸って生育した植物を持ち去って利用する農業は、植物の生育に伴い土壌から減少する窒素やリンなどを補給しなければ持続困難である。そこで、減少分を補給するために用いるのが肥料であり、特に窒素・リン酸・カリウムは肥料の三要素と呼ばれる。

出典元:Wikipedia

野菜が育つために最も必要とされる窒素・リン酸・カリウム

この3つの栄養素は特に不足しやすいといわれ、それを補うために肥料が使われています。

化学肥料と有機肥料

肥料には大きく分けて、化学肥料と有機肥料があります。

化学肥料窒素ガスなどの無機物を原料にして化学合成されたもの
有機肥料鶏糞などの動物性の有機物を原料にしたもの

化学肥料は化学的に合成したもの。
あるいは天然物を原料として加工して製造されます。

一方で、有機肥料というのは動植物の肥料であり、 堆肥や動物の糞尿などからつくられます。

「有機栽培」においては通常、有機肥料が使われています。

現代農業では、野菜の成長が早くてコストがかからない化学肥料を使用している農家さんが多いです。

化学肥料が使われるようになった理由

そもそも、なぜ化学肥料が使われるようになったのか。

それには「人口増加」と「食糧難」が関係しているといわれています。

化学肥料が世界ではじめて製造されたのはイギリス。

その後、ドイツのノーベル賞科学者フリッツ・ハーバーなどの研究成果により、世界中で化学肥料がつくられるようになりました。

以下、独立行政法人農業環境技術研究所による記事から抜粋したものです↓

世界最初の化学肥料の生産は、イギリスで1840年代に、過リン酸石灰の製造が試みられたころにあるとされている。世紀が変わって1909年には、ドイツの化学者F・ハーバーが空気中に無尽蔵に存在する窒素ガスからアンモニアを合成する実験に成功する。この功績により、ハーバーは1918年にノーベル化学賞を受賞している。その後、ハーバー法の改良に挑戦したK・ボッシュは、高圧化学の技術を用いてアンモニアの大量生産に成功する。この功績により、ボッシュもまた1931年に、技術者としては最初のノーベル化学賞を受賞している。この二人の科学者の名前に因(ちな)んで、空中窒素から窒素肥料を作る技術を「ハーバー・ボッシュ法」と呼ぶのである。

その後さらに、化学肥料の製造技術は多くの研究者によって改良され、より品質のすぐれた安価な肥料が生産されるようになる。そして、これらの化学肥料の利用により、ヨーロッパやアメリカ大陸の農作物の生産量は急速に伸びてゆくのである。20世紀の増加する人口をカバーするに足りる食料の生産量を確保することができた。

出典元:独立行政法人農業環境技術研究所「化学肥料の功績と土壌肥料学」

一般に、世界中で増加した人口の食糧をカバーするために、化学肥料が重要な役割を果たしてきたとされています。

そしてまた、ここ日本でも化学肥料は生産されるようになりました。

日本は戦後、深刻な食料不足に陥り、その解決策として化学肥料が使われるようになったといわれています。

食糧不足の時代を経て、人口が増加した現代にいたるまで、農作物の収穫を効率的にした化学肥料の存在は、私たちが安定して食生活を送れるためにとても大きな役割を果たしてきたといえます。

化学肥料のメリットとデメリット

化学肥料のメリットとデメリット

化学肥料のメリットとデメリットを生産者側・消費者側の目線でみてみます。

メリットデメリット
簡単に撒くことができる
効率的に収穫できる
野菜の見栄えがよくなる
安く買うことができる
食糧難を防ぐことができる
農薬を使う必要が出てくる
土の状態が悪くなる
「肥料やけ」を起こす可能性がある

化学肥料のメリット

化学肥料のメリット
  • 簡単に撒くことができる
  • 効率的に収穫できる
  • 安く買うことができる
  • 食糧難を防ぐことができる
  • 野菜の見栄えが良くなる

化学肥料は水分が少なく軽いので、簡単に撒くことができます。

農家さんにとっては、畑のような広い敷地に肥料を撒くことを考えると、化学肥料は使い勝手がとても良いんですよね。

また、化学肥料は有機肥料と違って、土に溶けやすいという特徴があります。

そのため短時間で野菜の成長を促すことができます。

時間をかけて野菜を育てるより、短時間で成長させた方が効率的です。

ですから、効率的に野菜を収穫することができるので、有機野菜に比べて安価です。

また、化学肥料は大量生産に適しているので、食糧難を防ぐ役割も担っています。

さらに、化学肥料を使うことでサイズが揃い、形が綺麗な野菜を収穫することができます。

日本では、多くの人が野菜を購入する際に見栄えが良いものを選ぶ傾向にあります。

逆に、形が悪い野菜は破棄されてしまったり、格安で売られていることも多いですね。

化学肥料のデメリット

メリットとは反対に、使用量を守らず、過剰に使うことで以下のような点が懸念されています。

化学肥料のデメリット
  • 農薬を使う必要が出てくる
  • 土の状態が悪くなる
  • 「肥料やけ」を起こす可能性がある
  • 野菜の栄養が低下する

良い野菜を育てるには、栄養が豊かに含まれている良い土が必要です。

野菜が喜ぶ良い土壌をつくるには「微生物」の存在が深く関わってきます。

微生物が落ち葉などの有機物を無機物に分解してくれて、それを肥料に野菜が育つ。
微生物はとても重要な役割を担っているのです。

しかし、化学肥料を使用すると直接養分が野菜に吸収されるので、微生物のエサがなくなってしまい、微生物が生きていけなくなります。

微生物がいなくなると、病原菌が発生し、今度は農薬を使わなければいけない事態になってしまうのです。

つまり、化学肥料を過剰に使うことで、土の状態がわるくなってしまうという訳です。

また、過剰に撒くと「肥料やけ」を起こす可能性もあります。

「肥料やけ」とは、化学肥料によって植物の葉っぱが火傷をしてしまい、細胞が壊れてしまうこと。

化学肥料は石油を利用しているので、硫酸イオンという物質が含まれているのですが、過剰に撒くことで、この硫酸イオンが葉に運ばれて、葉を焼いてしまうのです。

化学肥料は正しい量を正しく使用しなければ、野菜を痛めることになってしまうのです。

【健康と環境】化学肥料が与える影響

化学肥料の発明によって、効率的に野菜を育てることができ、大量に収穫することができるようになりました。

その一方で、化学肥料は健康問題や環境問題に取り沙汰されることも少なくありません。

あるとむ

化学肥料が与える影響について、もう少し考えてみましょう!

化学肥料が「健康」に与える影響

前述したように、野菜が成長するためには「窒素」が必要不可欠です。

窒素は野菜に吸収される際に、土の中で「硝酸態窒素」という硝酸イオンの形に変化します。

化学肥料を過剰に与えすぎると、窒素を野菜が吸収しきれずに野菜に残留してしまいます。

それを私たちが口に入れてしまうと、健康に悪影響を与える恐れがあるのです。

硝酸態窒素には、タンパク質と一緒に口に入れると発ガン物質を生成する可能性があります。

特に、小松菜や水菜など、葉物野菜に残留平均値が高いといわれていますね。

化学肥料が「環境」に与える影響

また、この硝酸態窒素は環境にも影響を与えています。

硝酸性窒素は水に溶けて簡単に土から流れ出ます。

地下水を汚染し、河川や海へ硝酸態窒素が流れることで、水中の微生物などに影響を与えてしまいます。

さらに、前述したように化学肥料の使い過ぎで土の質が悪くなると、農薬の使用も増えてしまいます。

農薬の使い過ぎもまた、自然環境に悪影響です。

安全性を優先して考える農家さんが、化学肥料を使わないのはこういう理由があってなのですね。

つまり、自分たちの利益だけでなく、健康や環境のことを考えてのことなのです。

まとめ

化学肥料にはメリットとデメリットがあります。

メリットデメリット
簡単に撒くことができる
効率的に収穫できる
野菜の見栄えがよくなる
安く買うことができる
食糧難を防ぐことができる
農薬を使う必要が出てくる
土の状態が悪くなる
「肥料やけ」を起こす可能性がある

効率的に野菜を育て、大量に収穫することを叶えてくれる化学肥料は、過剰に使用することで私たちの健康や環境に大きな影響を与えます。

食糧難を防ぐ重要な役割を担ってきた化学肥料ですが、「食の安全」を考える人が増えていることもあり、無農薬・無化学肥料の野菜を求める人も増えてきました。

ただし、「化学肥料=悪」と決めつけるのではなく、まず手元にある野菜がどのようにして作られているのかを理解して、野菜を選びましょう。

自分で食べるものを選択することは、体と環境を守ることの一歩に繋がります。

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