体に良い油ってなんだろう?
油を選ぶポイントが知りたいな・・・
今回はこんな疑問に答えます。
- 健康を第一に考えた油の選び方
- 戦後最大の食品公害「カネミ油症事件」について
近年、えごま油やココナッツオイル、オリーブオイルなど、ダイエットや美容、健康のために油を摂る「油ブーム」が起きるほど、油の持つ効能に注目が集まっています。
油には沢山の種類があり、それぞれに性質があります。
種類がありすぎて、結局、どれを選べばいいのか分からない・・・
そんな人は、多いのではないのでしょうか。
また、「油は健康にいい」という人もいれば、「健康に悪い」という人もいます。
実は油選びが1番難しいかもしれません。
油は健康にも良く、悪い面も強くあります。
油を選ぶポイントはいくつもありますが、この記事では健康を考えた上で大切なことは何かを考えてみたいと思います。
あるとむ
自然食・食養生アドバイザー
食を見直してジャンクフード依存・虚弱体質から脱却。自然食品店の店長として14年の経験、食養生・薬膳などを学び得た知識を活かし、ブログやSNSで広く発信中。
2023年食養生講座をスタート、2024年初著書『食の選び方大全』(サンクチュアリ出版)を出版。オンラインで食事改善の相談・サポートもしています。
油は重要な栄養素
油。
すなわち「脂質」は、「炭水化物」「たんぱく質」とともに、三大栄養素のひとつで、私たちが生きていく上では欠かせない栄養素です。
活動するためのエネルギー源となるほか、細胞膜やホルモン、胆汁を作る材料となり、皮膚に潤いを与えたり、脂溶性ビタミンの吸収を促すなど、体内でさまざまな働きをしています。特に脳組織の多くは脂質から成っています。
油の主成分である脂肪酸には「必須脂肪酸」と呼ばれるものがあります。
具体的にはn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸のことで、俗にいうオメガ3、オメガ6というやつですね。
これらは体内で作ることができない栄養素なので、食べ物や植物油から補う必要があります。
ですから、脂肪酸は体にとって必要な栄養素で、油はそれを取り入れるための重要な食品なのです。
現代は油過多!?
日本では、もともと現代のように油を摂っていませんでした。なぜなら、油は食用として用いるよりも、灯りとして用いていたからです。
油すなわち脂質は魚や大豆といった食品の中に含まれている分を主に摂取してきました。
天ぷらなどで油を使ってはいましたが、昔は今のような植物油は非常に高価で、だれもが使えるというものではなかったのですね。
歴史的にみますと、室町時代頃には中国から油料理が伝わってきたといわれていますが、現代のように日本人が急激に油を取るようになったのは明治時代、西洋で生まれた調理器具フライパンが入ってきてからです。
それまで煮物料理が中心だった日本ではそこまで油を必要としていなかったわけですが、欧米の食文化が入ってきて、フライパン料理が拡がってそれまでとは比較にならないくらいに油を使うようになっていきました。
油の種類
油にはいくつもの種類があります。
まず大別すると「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分かれます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
これは分子の構造的な違いで、炭素と炭素の間に二重結合が全くない脂肪酸を飽和脂肪酸、二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。
ただこれだと良く分からないですよね。
ですから、常温で固まるお肉やバター、ラードなどの動物性の脂を飽和脂肪酸。
常温で液体の植物やお魚の油を不飽和脂肪酸と覚えておいてください。
その中にもいくつか種類があって、こんな感じです。
私たちが日常的に使う植物油は不飽和脂肪酸ということが分かりましたね。
そして、その中にはオメガ3、6、7、9という種類があります。
どの脂肪酸も体には必要なもので、バランスがあります。
その中でも覚えておいてほしいのが「オメガ3と6のバランス」です。
現代人はオメガ6を摂りすぎている
よく「オメガ3がいいんでしょ」「オメガ6は取らない方がいいんでしょ」という話を聞くと思います。
その通りで、現代人はオメガ6系の油を摂り過ぎています。
必須脂肪酸であるオメガ3と6は、それぞれに役割があり、最近の研究では、オメガ3が白血球の働きを抑制、炎症を抑える働きがあり、オメガ6は白血球を活性化して病原菌などと戦う働きがあることが分かりました。
健康な体を維持するためには、このオメガ3と6の比率が【1:2】くらいがいいとされているのですが、現代は【1:10】、人によってはそれ以上の比率でオメガ6を多く摂りすぎている人がいるというんですね。
以下、NHKチャンネルより引用です↓
世界中の様々な疫学調査から、オメガ3とオメガ6をどのくらいのバランスで摂れば良いのかが明らかになってきました。例えば、大規模疫学調査が長年続けられている福岡県・久山町の研究によれば、血液中のオメガ3(EPA):オメガ6(アラキドン酸)のバランスが、1:2くらいまでは心臓病での死亡リスクが低く抑えられていますが、それを超えてオメガ6の方が多くなると、急激に死亡リスクが高まることが示唆されています。
引用:NHK健康Ch(https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1128.html)
一方、麻布大学の守口徹教授によれば、現在、日本人のオメガ3:オメガ6のバランスは、1:10にもなっています。健康に気を配った食事をしているという、「あさイチ」リポーターの松岡忠幸アナウンサーに血液検査をしてもらったところ、結果は、1:7.5とオメガ6過剰。結果を見て、ショックを受けていました。
では、なぜ1:2くらいが良いのか?そのメカニズムはまだよく分かっていませんが、人間だけでなく自然界で健康的に生きる野生動物などは概ねオメガ3:オメガ6が1:2程度になっています。中には、オメガ3の方が多い動物もいますが、オメガ6が過剰な生き物というのは人間以外にはほとんどいないようです。
見失ってはいけないのは、オメガ6が悪いのではなくて、オメガ6の摂りすぎなわけです。
とはいっても、現代の食生活でオメガ6を減らすのは難しいので、オメガ3を増やすことを意識するといいといいます。
そういう意味では、なんでも植物油で解決しようとするのではなく、イワシ・サンマ・サバのような青魚を日常的に食べることがおすすめですね。
油選びで気をつけるべき3つのポイント
油には多くの種類がありますが、結局のところ、どれも体に良い面があり、摂り過ぎたら体に悪いという面があります。
ですから、「体に良い」とされている油でも、そればかり使うというのはあまりおすすめしません。
人によって体質も違いますし、食生活も違います。
油の種類、性質を理解したら、自分の体質、そして料理の内容に合わせて油を使うのがベストです。
さて、植物油を選ぶときにこだわりたいことは、種類だけでなく「容器」や「製法」、そして「品質」です。
①酸化しにくい容器の油を選ぶ
油を使う上でまず気をつけるべきは「酸化」です。
油は熱・光・酸素に弱いです。
これらに触れることで油が酸化し、体にとって悪いものになってしまいます。
油の容器はペットボトルよりも瓶、透明よりも光を遮ってくれる「遮光性の瓶」がおすすめ。
特に、えごま油などのオメガ3は実は酸化しやすい油ですので気をつけてください。
もし、遮光性の瓶に入っているものが手に入らず、透明の瓶に入っている油を買った場合は、アルミホイルなどで覆って光が入らないようにするといいですね。
また、瓶入りの油がなく、ペットボトルの油を買う場合は、大容量のものではなく、少ない量のものを選んで、なくなったらその都度買うようにするといいですね。
瓶入りの油は大容量のペットボトルの油と比べて、多少割高ではありますが、酸化というデメリットを考えると、その方がおすすめです。
②圧搾絞りの油を選ぶ
油の製法は主に3つ。
- 圧搾法(一番搾り)
- 抽出法(化学処理)
- 圧抽法(圧搾+抽出)
それでは、一つずつ解説してゆきます。
圧搾法(一番搾り)
原料に圧力をかけて油を搾り取る製法です。
「一番搾り」とも言います。
昔ながらの製法で、手間は掛かりますが、化学薬品を使わないので安心です。
また、ビタミンなどの栄養素も豊富に残り、香り、風味共に良い油が搾れます。
抽出法に比べて効率が良くないため価格が高めです。
抽出法(化学処理)
原料に油を溶かす性質の薬剤を入れて、化学的に油を抽出する製法です。
油を抽出した後、蒸留して薬剤を分離させます。その後、脱色、脱臭、酸化防止のためにさらに薬剤が加わえられます。
圧搾法に比べると効率がよく、薬剤を使うことで95%以上油が搾れるので、価格が安くなります。
現在販売されている油のほとんどがこの製法。
ただ、化学処理しているので、心配な面もあります。薬剤としてよく使われる「ノルマルヘキサン」は揮発させるので安全性が認められていると言われていますが、発がん性が疑われています。
圧抽法
圧搾法で油を搾った後に、その搾りカスに対して抽出法を行う製法です。
圧搾法の場合、原料の油が10~20%残るので、この残りの油を採る為に抽出します。
効率は非常によく、抽出法以上に価格を安くすることができます。
体にいい油を選ぶなら、おすすめは昔ながらの圧搾法(一番搾り)です。
前述したように、市販されている油のほとんどが化学抽出ですので、圧搾法の場合はそれが明記されています。
③内容にこだわった油を選ぶ
さらにこだわるなら、油の原料の品質・内容もチェックしてみましょう。
例えば、植物油の原料として使われることの多いなたねや大豆は外国産のものが多いです。
しかし、アメリカ・カナダなどのなたねや大豆は遺伝子組み換え作物の可能性もあります。
また、輸入穀物にポストハーベスト農薬はつきものです。
もちろん、安全性などは検査されているはずですが、そういった心配のない国産原料のものを選ぶことができればなおいいですね。
また、かなり希少ではありますが有機原料からつくられた油もあります。
油の気になること
そもそも「サラダ油」って?
サラダ油とはサラダにそのまま使える油として名付けられたといいます。
主に大豆、なたね、とうもろこし、ひまわりなどの植物を原料として作られます。原料によって油の色や風味が異なるため、品質を保つためにブレンドしているものが多いです。
植物油って色々あるけど、どう使い分けたらいいの?
基本的には料理で使い分けるのがいいです。
なたね油はどんな料理にも使えますし、
こめ油はさっぱりとしているので揚げ物などに使うといいです。
ごま油は香りがよいので和食や中華にもいいです。
オリーブオイルはドレッシングにも使いやすい。
個人的には調理で使うなら酸化しにくい油、オメガ9を選ぶべき。と個人的に思っています。オメガ9はオリーブオイル、こめ油、などですね。
オリーブオイルの見分け方(エキストラバージンオイルって?日本と海外で規定が違う?)
オリーブオイルは主に2種類が出回っています。
エキストラバージンオリーブオイル、ピュア(精製)オリーブオイルです。
おすすめはエキストラバージンで、これはつまり「圧搾1番搾り」のこと。
また、オーガニックであればなお良いです。
一般的な植物油に比べて、オリーブオイルは果実を絞るので、薬品や農薬が残留しているのは好ましくありません。
ただし、日本ではIOCによる国際規格を採用していません。
日本と海外ではエキストラバージンの基準値が違います。
IOCの品質基準でエキストラバージンオリーブオイルと表示するには、化学検査による酸度が0.8%以下、官能検査で評価されないと認められません。
日本のJAS法の場合は、評価方法は酸度のみで官能検査はありません。
基準値である酸度2.0%以下を満たせば、エキストラバージンオリーブオイルと名乗ることができてしまいます。
「カネミ油症事件」を忘れてはいけない
日本では、油をめぐる大きな事件がありました。
長崎県、福岡県を中心に西日本一帯で起きた戦後最大の食品公害「カネミ油症事件」です。
「カネミ油症事件」とは
「カネミ油症事件」とは、カネミ倉庫社が製造した米ぬか油が原因で、頭痛、手足のしびれ、皮膚障害などの症状を訴える人が続出した食品公害。
患者は皮膚の異常にとどまらず、内臓疾患なども併発。発症した女性から「肌の黒い赤ちゃん」が生まれ、社会問題となりました。
1968年10月、最初の患者が確認されてから、健康被害を訴える人は1万4000人を超え、現在も心身の不調に悩む人はなくならず、2018年の統計では、死亡者を含め認定患者数は累計2322人を数えます。
事件の原因は、食用米ぬか油の製造過程でPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入したことが挙げられています。
また、PCBの加熱によってできるダイオキシン類PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)が主因と判明しました。
PCDFの毒性はサリンの約10倍だと言われています。
抽出法には少なからずリスクがある
PCBが油に混入したのは、抽出法により油を溶剤で溶かした後、油の臭いを取り除く脱臭工程であったことが分かっています。
脱臭工程でPCBが混入した要因は、「パイプに穴が空いていた」「脱臭塔の工事ミス」など諸説あり、はっきりとは分かっていません。
しかし、いずれにしても、混入したPCBを加熱したことにより、毒性の強いPCDFが発生してしまいました。
抽出法は、化学的な溶剤を使い、工業的な製造過程をいくつか行う必要があります。
圧搾法に比べて、安全面にリスクがあることを忘れてはいけません。
カネミ油症事件について、詳しく知りたい方は、厚生労働省のホームページで詳しく説明されていますので、参考にしてください≫https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kenkoukiki/kanemi/
まとめ
油を選ぶ上で大切なポイントはいくつかあります。
その中でもわたしは搾り方が重要と考えています。
その上で、種類を選びましょう。
毎日、体に入る油だからこそ、ましてや、健康の為に摂る油だからこそ、安全な油を選んでほしいと思います。